歴史のなかの邂逅3時代小説と男性ー司馬遼太郎

歴史のなかの邂逅3ー司馬遼太郎

時代小説と男性

半次郎は、文字が読めなかった。他藩に使いに行っても、相手の藩のことを

弊藩は

などとまちがっていう。自分の藩は、

貴藩

である。

同行の人はいつも汗をかいたという。帰路、それを訂正すると、べつに怒りもせず、

左様か左様か。これは大層な学問をした。自分の藩のことは弊藩でごわすな。なるほどそういえば屁はシモから出す。屁藩と覚えておけばよろしうごわすな

と大笑いした。こういうこだわらなくて愛嬌のある男だから西郷も可愛がり、同藩の士もみなかれを愛した。親分かたぎで、人に信頼される男だったから、育ちは低かったが自然と藩中で重きをなすようになった。

おいに学問があれば天下をとっとる

と自負していたという。